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奉告祭ーえびす講ー

こんにちは、十日恵比須神社 神職です。この「神職と巫女からのお便り」では神社に関する話題から、私たちが日々奉仕をする中で感じることなど、様々な記事を掲載致します。

今回は「えびす講」についてお話致します。

当社の御祭神である えびす様は、全国各地で広く厚く信仰されている神様です。

「えびす講」とは民間信仰の一つであり、10月20日(旧暦)ないし11月20日(新暦)に行われる祭事のことです。(神社によってはえびす講社をもつお社もございます)

地方また地域によって様々な信仰の形がございますが、えびす様の御神像や掛け軸に2匹の鯛をはじめ地元の食材等をお供えし、航海安全・大漁満足・商売繁盛・五穀豊穣をお祈りするというのが多いようです。

先日、神社へお越しになられた下方・本村恵比須講の皆様は、当社十日恵比須神社のえびす様をご信仰されている方々でございました。えびす様の掛け軸を座元の家で一年間お祀りし、1月10日(当社の例祭日)のえびす講の祭事が終わると、次の座元を定めてまた次の家で一年間お祀りをする、というような信仰の形であったそうです。これを明治・大正の頃から今日まで、長きにわたり続けられていらっしゃいましたが、コロナの影響で集まることが難しくなるとともに、地域住民の高齢化によって祭事を引き継ぐことができず、誠に残念なことではありますが今回、御神前にて解散の奉告祭を執り行うこととなりました。

祝詞の中では今回解散となることの経緯、長年お祀りし続けてきた掛け軸をここに返納させていただきますということを先ずお伝え申し上げ、その上で下方・本村恵比須講の皆様が、これからも変わることなく十日恵比須大神様のお導きをいただかれますようにと、心を込めてご奉仕させていただきました。

このように脈々と受け継がれてきた文化や伝統が、コロナの影響をはじめ様々な事情を抱えてなくなりつつあります。一つの信仰の形がなくなるということは、地域住民同士の関わりが減ってしまうということであり、また子どもたちにとっては、祭事を通して大人たちの動きを見る、昔話を聞くという学びの機会がなくなってしまいます。私たち神職にとっても、非常に悲しい現実であるとともに、これから先の重要な課題でもあります。

いま私たちにできることは、まずこの現状をたくさんの方に知ってもらうこと、そして今ある祭事・行事をしっかり守り続けていくこと、神社が皆様の集いの場として機能し続けることだと思っております。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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